アフガニスタン 料理と国の物語 HTML
アフガニスタン 料理と国の物語
第1章 はじめに
アフガニスタンは、中央アジアと中東、南アジアを結ぶ文明の交差点に位置し、長い歴史の中で多様な文化や宗教が交わってきました。本書では、その国の歴史や現状、そして食文化を料理のレシピとともに紹介します。料理を通じて、遠い国の人々の暮らしや価値観を少しでも感じ取っていただければ幸いです。
第2章 アフガニスタンという国
アフガニスタンは山岳地帯が国土の大部分を占め、古くから東西交易の要衝として栄えてきました。シルクロードの中継地として、多様な民族が行き交い、多彩な文化が生まれました。
主要民族には、パシュトゥーン人、タジク人、ハザラ人、ウズベク人などがあり、言語や文化が複雑に入り組んでいます。イスラム教が国民の大半を占める一方で、地域ごとに生活様式や伝統が異なるのも特徴です。
第3章 9/11とアフガニスタンの現状
2001年9月11日の米国同時多発テロは、アフガニスタンの運命を大きく変えました。タリバン政権がアルカイダをかくまっていたとして、米国は軍事介入を開始。その後20年以上にわたって紛争と不安定な情勢が続きました。
現在もタリバンが政権を掌握していますが、女性の権利制限や教育機会の剥奪など、人権問題が深刻化しています。一方で国外に避難した人々や、支援団体が復興と人道支援のために活動を続けています。
第4章 アフガニスタン料理の魅力
アフガニスタン料理は、インドのスパイス、イランや中東の香辛料文化、中央アジアの乳製品や小麦文化が融合し、独自の食文化を形成しています。
代表料理「カブリ・プラオ」は祝祭やもてなしの場に欠かせません。蒸し餃子「マンティ」、手打ち麺スープ「アーシ」、薄焼きパン「ボラニ」など、小麦を使った料理も豊かです。
ケバブやヨーグルトを使った料理、ドライフルーツやナッツのデザートなども特徴的で、食卓には「もてなしの心」が色濃く反映されています。
第5章 代表的な料理のレシピ集
カブリ・プラオ
材料(2人分)
白米 200g, ドライフルーツ 40g, モルシージャ 60g, ナス 1本, ピーマン 半分, オクラ 3本, 玉ねぎ 半分, トマト 半分(100g), にんじん 30g, おろしニンニク 小さじ1, おろし生姜 小さじ1, クミン 小さじ1, シナモン 小さじ1, 塩 小さじ1, ヨーグルト 50g, ベビーリーフ 40g, バター 15g, オリーブオイル 大さじ1
手順
1. 米とドライフルーツを一晩水に浸す。
2. 野菜とモルシージャを炒め、香辛料を加える。
3. 米と炒めた具材を土鍋に入れ、水を加えて炊く。
4. 沸騰後は弱火で10分、音を確認しながら火を止め蒸らす。
5. ベビーリーフを加えて蒸し上げ、仕上げる。
アーシ(手打ち麺入りスープ)
材料(2人分)
小麦粉 100g, 水 50ml, 塩 少々, 玉ねぎ 1個, トマト 1個, ひよこ豆 50g, ヨーグルト 50g, にんにく 1片
手順
1. 小麦粉と水で麺を作り、細く伸ばして切る。
2. 鍋で玉ねぎとにんにくを炒め、トマトを加える。
3. ひよこ豆を加えて煮込み、スープを整える。
4. 麺を加えて煮る。
5. ヨーグルトを加えて仕上げる。
ボラニ(野菜入り薄焼きパン)
材料(2人分)
小麦粉 150g, 水 70ml, 塩 小さじ1/2, ほうれん草 50g, じゃがいも 50g
手順
1. 小麦粉と水で生地を作り、寝かせる。
2. ほうれん草とじゃがいもを茹でて潰す。
3. 生地を丸く伸ばし、具材を挟む。
4. フライパンで両面を焼く。
5. 焼き色がついたら完成。
ケバブ(羊肉の串焼き)
材料(2人分)
羊肉 200g, 玉ねぎ 1/4個, 塩 小さじ1/2, クミン 小さじ1/2, オリーブオイル 大さじ1
手順
1. 羊肉を一口大に切る。
2. 玉ねぎをすりおろし、調味料と混ぜる。
3. 肉を漬け込み、串に刺す。
4. 強火のグリルで焼く。
5. 焼き色がついたら完成。
第6章 料理から見えるアフガニスタンの姿
カブリ・プラオは豊かさと温かさの象徴であり、客をもてなす心を示す料理です。マンティやボラニは家庭の絆を深め、ケバブやヨーグルト料理は遊牧生活の影響を色濃く残しています。ドライフルーツやナッツの利用にはシルクロード交易の歴史が反映されています。料理を通して、人々の生き方や歴史が伝わります。
第7章 イベント当日(アフガニスタン大使館)
大使の挨拶
「現在タリバン政府では残念なことに女性の権利が制限されています。アフガニスタンは国民の49%が女性です。つまり国民の半分の権利が踏みにじられている現状です。ここアフガニスタン大使館は、タリバン政権のものではありません。アフガニスタン国民のものなんです。」
支援活動紹介
REALs(リアルズ)の「東部地震緊急支援」のスライド紹介がありました。
文化展示
アフガニスタン国歌の歌詞(和訳)も紹介されました。さらに「シルクロードの愛情フルーツ」を提供したアシュラフ・パブリさんが、ダリ語の「マナナ」、パシュトー語の「タリャリク」という感謝の言葉について講演しました。
料理体験
- カブリ・プラオ
- ボラニ・バンジャン
- ケバブ
- サブジ
- サラダ
- アフガンパン
- デザート「フェルニ」
料理体験(家庭で再現)
材料・手順は第5章を参照。
感想
今回は「オクラとナスの野菜ビリヤニ」を参考に土鍋で調理。モルシージャ、夕顔、シルクロードの愛情フルーツを加えました。仕上げに蒸したベビーリーフの苦みや、ドライフルーツの瑞々しさがアクセントとなり、とても美味しかったです。
第8章 おわりに
六本木一丁目駅からアフガニスタン大使館に来る途中、高層ビルに囲まれた道を歩いた。もし災害で電気が止まれば、この街で生き続けるのは難しいだろう。
太陽光発電パネルで埋め尽くされた農地を見て、フレデリック・バックの『木を植えた男』を思い出した。
内村鑑三の『後世への最大遺物』には「いさましい高尚なる生涯こそ一生かけて残すべき」とあった。今日すばらしい人を知り、その言葉の意味を実感した。
料理を通して国の物語を知ることは、人と人をつなぐ第一歩である。本書がそのきっかけとなることを願っている。
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